リサーチニュース 2012

2012年11月

スカイカイトを用いた発電システム

フ ラウンホーファーIPA(生産技術・オートメーション研究所)は、スカイカイトの引張力を用いた、500m以上の高度の強風のエネルギーを電力に変換する 発電システムを開発しました。高高度では風速が増加、しかも安定することを利用。風力発電よりも建設費が少なく安定した電力供給が望めます。

繊維強化プラスチック射出成形用の離型薄膜を開発

フ ラウンホーファーIFAM(生産技術・応用マテリアル研究所)は、大型部品や曲面にも適用可能な、繊維強化プラスチック射出成形用の離型薄膜を開発しまし た。弾性変形性のよいポリマー薄膜に離型剤をコーティングした後に、プラズマ加工でコート剤の表面分子を不活性化。曲面にも適切に離型薄膜を付着させるこ とが出来、しかもコート剤の残留物が残りません。

双方向マイクロディスプレイの開発

フ ラウンホーファーCOMEDD(有機材料・電子デバイス研究センター)とフラウンホーファーIOSB(オプトエレクトロニクス・システム技術・画像処理研 究所)は、装着者の目の動きで操作出来るインタラクティブHMDを開発しました。新型CMOSチップに光検出器とOLEDマイクロディスプレイを統合し、 画像の読み込みと再現の両方が出来る、双方向ディスプレイとして機能します。

緊急時の効果的な処理のためのチェックリスト

フ ラウンホーファーFIT(応用情報技術研究所)は、停電などの緊急時に緊急通報受理機関が参照出来る、役割ベースのチェクリストを提示するソフトウェアを 開発しました。個々の部署が処理しなければならないテーマだけではなく、他の部署や機関と協調しなければならないテーマも効率的に行えるように提示され、 これらの機関が行程管理機関として機能するために役立てます。

低光量CMOSセンサーの開発

フ ラウンホーファーIMS(マイクロエレクトロニックサーキットシステム研究所)は、  低光量の画像の読み取りが可能な、単光子アバランシェ光検出技術ベースの新しいCMOSを開発しました。光電子増幅効果を利用している上、各センサーに集 光用のマイクロレンズを付け、感度を更に改善。しかもデジタル信号は直接マイクロチップに送られるため、アナログ信号加工が不要となります。

ゴム廃材から高品質材料をリサイクリングする技術

フ ラウンホーファーUMSICHT(環境・安全・エネルギー技術研究所)は、ゴム廃材をタイヤ、はねよけ、ハンドルなどに利用可能な高品質材料へリサイクル する技術を開発しました。微細化した粉末状ゴムと粉末エラストマーを熱可塑性プラスチックに混合。ニーズに応じて弾性、破断ひずみや硬さが調整可能で、ま た、加工に要するエネルギーや資源コストを低減することが出来ます。

脳圧センサの開発

フ ラウンホーファーIBMT(生物医学技術研究所)は、脳圧を測定する小型センサを開発しました。貴金属の容器を用いて生物的適合性と防水性を保ち、容器内 の可動式の金属薄膜で脳内の圧力変化を検知します。体外計測器は計測値を無線パルスで受信するだけではなく、体内センサを作動させる機能も持ち合わせてい るため、センサには電池が不要となり、交換手術の頻度が減少します。

2012年10月

人工角膜の開発  

フ ラウンホーファーIAP(応用ポリマー研究所)は、ARTCORNEAプロジェクトにおいて2種類の人工角膜を開発しました。その1つは2010年フラウ ンホーファー研究所受賞の人工角膜開発をベースに、光学的特性のよい新しいコーティングを適用し、さらに接触端に若干の撥水性を与え、宿主組織の細胞との 接着性を改善しました。もう1つの人工角膜用には、化学的、生物学的に不活性の生物的適合性の高い人工角膜材料ACTO-TexKproを開発。フッ化ポ リビニリデンに反応性分子を持つフッ化合成組織コーティングを施してあり、眼内光学系との接着性に大変優れています。    

ブラックシリコンによる太陽電池の効率向上  

フ ラウンホーファーHHI(ハインリッヒ・ヘルツ通信技術研究所)は、太陽光の赤外領域の波長も電気エネルギーに変換することが出来るブラックシリコンを用 いた太陽電池を開発しました。ブラックシリコン作成の際のレーザーパルス形状により、シリコン格子内の硫黄原子のエネルギー準位を調整し、変換効率の向上 に成功しました。    

高速無線通信用モジュール  

フ ラウンホーファーIPMS(フォトニック・マイクロシステム研究所)は、有線方式に劣らないデータ通信速度を可能にする、ワイヤレスデータ通信用の赤外線 モジュールを開発しました。光信号の送受信を同時に行う小型トランシーバー、誤信号修正プログラムを組み込んだデコーダーなどのマルチギガ通信モジュール 内の高速処理ハードウェアおよびソフトウェアにより、1 Gbit/sのデータ通信が可能です。    

歯磨き粉の研磨剤のマイクロトライボロジー評価  

シ リカやアルミナなどの歯磨き粉に含まれる研磨剤の評価は現在RDA値により行われていますが、フラウンホーファーIWM(材料メカニズム研究所)はその代 替となる、マイクロトライボロジー実験による摩擦力の評価システムを開発しました。摩擦摩耗試験は、歯ブラシの毛一本ごとに歯磨きと同様の動作状態を再生 して行われ、現実に近い研磨率および歯ブラシーエナメル層―歯磨き粉の相互作用の評価が可能です。   

自己が変形するホーニング加工ツール  

フ ラウンホーファーIWU(工作機械・変形技術研究所)は、エンジン実働時のシリンダの静的変形および熱変形を考慮したホーニング加工ツールを開発しまし た。ピエゾを組み込んだツール自体が環境に応じて変形し、シリンダ形状を加工します。実働時のスムーズなピストンの動きにより摩擦を抑えることが出来るた め、内燃機関の省燃費につながり、さらに製造工程も簡易になります。   

コンクリートの電気的破砕によるリサイクリング  

現 在のコンクリートの解体再利用では、材料の質の劣化が問題になっています。フラウンホーファーIBP(建築物理研究所)が開発した高出力インパルスを用い た電気的破砕システムは、インパルス照射による水の誘電率の変化を利用し、コンクリートを分解。骨材の効率よい再利用が可能になります。

2012年9月

組織間液を用いた非観血式グルコース濃度測定システム

フ ラウンホーファーIMS(マイクロエレクトロニックサーキットシステム研究所)は、糖尿病患者の血液ではなく涙や汗などの組織間液でグルコース濃度を測定 する、超小型な非観血式のシステムを開発しました。0.7mm×10mmのデバイスにナノポテンショスタット、診断部、AD変換が組み込まれ、ワイヤレス で受信部にデータを送信することが出来ます。また、100μA以下で作動し、デバイスの長寿命化や無線によるエネルギー供給の適用が期待されます。

溶接低温割れの予測

建 造物や構造物の軽量化、省資源化のために、近年は超強力鋼がよく使用されますが、溶接時の低温割れが問題になっています。フラウンホーファIWM(材料メ カニズム研究所)は、設計段階で部材の低温割れを予測出来るプロセスを開発しました。鋼材の水素濃度、内部応力、微細構造の他、温度勾配を考慮したシミュ レーションにより、部材の低温割れを予測し、設計段階での修正が可能になります。

迅速で無駄の少ない製産設備のコンセプト作り

フ ラウンホーファーIFF(ファクトリーオペレーション・オートメーション研究所)は、逆浸透膜の製産工場の設計時にバーチャルエンジニアリングを適用 し、シミュレーションによる製産過程の最適化を工場の設計前段階で導入、工場設計プロセスの短縮化に成功しました。実際に工場建設や設備導入された後には 修正しにくい条件も事前に考慮することが出来、無駄のない工場設計を可能にします。

窓開閉状態検知システム

フ ラウンホーファーIIS(集積回路研究所)は、窓枠に設置されたセンサーにより窓の開閉度を確認出来るシステムを開発しました。独自開発の3次元電磁場検 出システムHallinOne®により、窓の取手の位置や角度を検出、さらに、省エネルギーのデータ送信システムs-net®を利用し、玄関の情報ステー ションやスマートフォンへデータを送ります。太陽光と周囲の熱により電力を得る機能も持たせ、電池やケーブルなしでの設置が可能です。

高さ200mの風計測マスト

風 力エネルギーの効率的利用に貢献するため、フラウンホーファーIWES(風力エネルギー・エネルギーシステム研究所)は200mの高さの風計測マストを設 置し、風速や気流の乱れなどの気象データを集めています。超音波式アネモメータ、ロビンソン風速計などで異なる高度のデータを、実際に設置される風力発電 用ブレードの最上部の高さまで取得することが出来るため、風車の向きやサイズの最適化設計に役立ちます。

安価で堅牢な導電性繊維を用いた破損箇所検出システム

フラウンホーファーIZM(信頼性・マイクロインテグレーション研究所)は、
布 地に格子状に織り込んだ導電性繊維と圧力センサを組み合わせることにより、大面積をカバーする破損箇所検出システムを開発しました。銀メッキ導電性繊維な どの汎用材料を使用し、半導体分野で利用される接合技術などを取り入れた、シンプルで堅牢な信号検出システムであり、建造物やトラックの荷台の運搬物の窃 盗に対する保護などへの応用が期待されています。

2012年8月

排水利用のリン酸肥料生成プロセス


フ ラウンホーファーIGB(境界層・バイオプロセス技術研究所)は、価格上昇をし続けるリン酸肥料を、下水処理場の排水やバイオガス工場の発酵残留物内のリ ンの再利用で生成するプロセスを開発しました。窒素とリンを含む溶液の電気化学反応によりリン酸マグネシウムアンモニウムを沈殿させ、これを直接肥料とし て使用可能な、省エネルギーで化学薬品の添加なしのプロセスです。

スマートワイヤレスコンセント


フ ラウンホーファーESK(通信技術システム研究所)とフラウンホーファーITWM(技術・経済数学研究所)は、スマートグリッドプロジェクト 「HexaBusホームオートメーションシステム」の一環として、IPv6プロトコルによりワイヤレス通信で接続できるコンセントを開発しました。それぞ れのコンセントがIPアドレスを持ちデバイスと通信出来るため、スマートフォンやノートパソコンを用いてどこからでもそれらのデバイスが操作可能になりま す。

ウィンドファームによる周囲への影響のシミュレーション

フ ラウンホーファーIWES(風力エネルギー・エネルギーシステム研究所)は、風力発電用の回転翼による超軽量飛行機や周囲への影響を検討するためのシミュ レーションを開発しました。風向き、風速、様々な時間単位、ウィンド超軽量飛行機が飛行する場合の軌道などのパラメーターを変化させ、さらに最適なグリッ ドの生成技術により、より正確なシミュレーションが可能になりました。

建造物のエネルギー効率を考慮した多機能窓モジュール


フ ラウンホーファーIBP(建築物理研究所)は、エネルギー効率の良い建造物に適応出来る多機能な窓モジュールシステムを開発しました。モジュールは、窓、 窓枠、テクニカルシステムボックスと断熱パネルからなり、窓の下に設置されるテクニカルシステムボックスには、熱交換器や暖房制御のための機器、電気ケー ブル、配管など、壁を通してアクセスが必要なものを全て組み込むことが出来ます。短時間で取り付け可能で、将来的な改装も考慮しています。

カルコゲニドガラスを用いた赤外線レンズの製造プロセス


フ ラウンホーファーIWM(材料メカニズム研究所)は、カメラ用赤外線レンズの製作コストを70%以上削減出来る製造プロセスを開発しました。高価かつ機械 的な加工しか出来ないゲルマニウム、セレン化亜鉛や硫化亜鉛のような結晶材料の代わりに、軟化温度の低い非結晶のカルコゲニドガラスを用いることにより、 不等温ホットスタンピング加工が適応可能になり、研磨レンズと同様の光学品質を持つレンズを、安価に製作することが出来ます。

エコなコンピュータの提案

フ ラウンホーファーIZM(信頼性・マイクロインテグレーション研究所)は、製作開始から使用、さらにはリサイクルまでの健康と環境被害を考慮した、木の筐 体を持つタッチスクリーンのコンピュータを製作しました。空冷装置をヒートシンクによる放熱で代替し、スクリーンにはLED照明を使用。モジュール性を高 めた上に、使用する資源も少なく、典型的なデスクトップPCと比べ二酸化炭素発生量の70%低減を達成しました。

2012年7月

シリコーン製太陽光発電セル封止材


フ ラウンホーファーCSE(再生可能エネルギーシステムセンター)は、シリコーンを用いた太陽光発電セル封止技術を開発しました。従来使用されているエチレ ンビニルアセテートに比べ、繰り返し負荷による疲労試験の、特に低温条件下における特性が良く、部品の保護と外部環境による影響の緩和を同時に行える素材 として、高い可能性が期待されています。

光ファイバーケーブルを用いたヨットのリアルタイム状態検知


フ ラウンホーファーHHI(ハインリッヒ・ヘルツ通信技術研究所)は、ヨットの船体、マスト、帆にかかる応力をリアルタイムで測定するセンサーシステムを開 発しました。本来は風車の回転翼用に開発していたファイバーブラッググレーティングセンサをヨットに応用し、クルーがスマートフォンアプリで即座に船体の 状態を検知することが出来ます。

電気自動車用バッテリーの冷媒


フ ラウンホーファーUMSICHT(環境・安全・エネルギー技術研究所)は、電気自動車用バッテリーの冷媒として、パラフィンと水の混合物 CryoSolplusを開発しました。水の3倍もの蓄熱量を持ち、界面活性剤の添加により分散液を安定化。長時間走行など厳しい使用条件下での冷却効果 も高く、冷却システムの軽量小型化が可能になります。

酸化チタンを用いた自己洗浄素材

10 の研究所からなるフラウンホーファー光触媒技術アライアンスでは、紫外線による酸化チタンの活性化を用いた様々な自己洗浄素材を開発しています。フラウン ホーファーIGB(境界層・バイオプロセス技術研究所)では、プラスチックのコーティング材、フラウンホーファーIPA(生産技術・オートメーション研究 所)では、壁塗料、さらに、フラウンホーファーIST(被膜・表面技術研究所)ではガラスの薄層コーティングを開発しています。

ステントの被膜開発

手 術後のステントずれのためにおこる気道狭窄やステント挿入による感染症を防ぐためのステント用被膜を、フラウンホーファーIGB(境界層・バイオプロセス 技術研究所)が開発しました。ステントをポリウレタンフィルムでコーティング、さらに接着タンパクを付着させた後にプラズマ処理を施すことにより、初代培 養細胞の増殖性も良く、また留置性も良いステントが製作出来ます。

特定波長範囲の光の透過性が高いガラス

フ ラウンホーファーISC(ケイ酸塩研究所)は、長期安定性のある0.1μmの薄さの無機コーティングを開発し、人間のバイオリズム制御すると言われている 450-500 nm領域の光の透過率が最大となるガラスを製作しました。現在は複層ガラスの内側に使用されていますが、将来的には部屋側および外側での使用も計画してい ます。

2012年6月

液体挙動解析シミュレーションソフトウェアの開発

フ ラウンホーファーIWM(材料メカニズム研究所)は、液体の物体表面での挙動を解析するシミュレーションソフトを開発しました。固体・液体・気体の三相接 触線を考慮し、液滴の形状や液体の流動挙動を原子間相互力からマクロレベルの表面構造による影響までを含んだ解析が可能です。自浄効果の解析の他、医療用 の微小流体システムの開発に応用できます。

EAPを用いた緩衝装置の開発

フ ラウンホーファーLBF(構造耐久性・システム信頼性研究所)は、電場応答性高分子(EAP)を用いた緩衝装置を開発しました。タバコの箱より小さいサイ ズに40層もの薄型高分子電極を積層したアクチュエータが、能動的に振動を吸収。車両走行中の振動軽減への応用、また、振動を電気に変換するワイヤレス発 電素子として利用し、橋梁の状態監視用センサへの応用などが考えられています。

ゼオライトを利用した蓄熱システムの開発

燃 料のエネルギーの大部分は熱として環境に放出されています。この熱エネルギーを有効利用するために、フラウンホーファーIGB(境界層・バイオプロセス技 術研究所)は、ゼオライト小球を用いた蓄熱システムを開発中です。水の3〜4倍の熱を保存できるためシステムの小型化が可能であり、また、長時間にわたり 熱損失がほとんどない蓄熱状態を保つことができます。

自然原料を用いた接着剤の開発

高 価な化石燃料を代替する再生可能な接着剤原料の開発が、フラウンホーファーの研究所で進んでいます。フラウンホーファーUMSICHT(環境・安全・エネ ルギー研究所)では、ポリ乳酸を用いた感圧性接着剤を工業用途に開発中です。また、フラウンホーファーIFAM(生産技術・応用マテリアル研究所)では、 水中で硬化するフジツボの粘着液のタンパク質アミノ酸成分の解析を行っており、バイオ接着剤の開発準備を進めています。

VR工場計画システム

フ ラウンホーファーIFF(ファクトリーオペレーション・オートメーション研究所)は、工場計画、改築、メンテナンスを行うためのバーチャルシステムを開発 しています。実際にBASFの製造工場の部品・パーツ3次元データやメタデータをもとに、6mの高さを持つ360度の投影像を作成。VRトレーニングス テーションにて工場計画の詳細を確認することができます。

ウェブサイトコンプライアンス

90% のウェブサイトがコンプライアンスを確保していないと言われています。フラウンホーファーFIT(応用情報技術研究所)は、ウェブサイトコンプライアンス を監視するEUプロジェクト“I2Web“のコーディネーターとして、2004年に開発した“imergo Web Compliance Suite“をグレードアップ、サイトの最適化だけでなく、バリアフリーなサイトの作成、コンテンツ・関連の妥当性の監視などを目指しています。

2012年5月

太陽光発電設備の計画を最適化

フ ラウンホーファーITWM(技術・経済数学研究所)は、シーメンスと共同で新しい発電設備計画用ソフ トウェアを開発しました。建造物の形状やモジュール、インバータの型を入力し、太陽電池の設置角度、間隔などのパラメータを操作することで、数百もの異な る発電所設計を検証出来ます。日照や物理的モジュール出力などの条件をもとにした均等化発電原価の決定にも役立ちます。

スマートフォン用のミニプロジェクター

フ ラウンホーファーIOF(応用光学・精密機械工学研究所)は、微小マイクロレンズ配列を用いた高輝度LEDプロジェクターシステムを開発しました。各マイ クロレンズが画像全体を映し出すことで高解像度な画像を再現し、さらにレンズの大きな焦点深度により、湾曲したスクリーン形状にもシャープな画像を映し出 すことが可能です。また、リソグラフィーを用いた大量生産向けの経済的な生産方法を採用しました。今後は、赤外線を画像に重ね合わせプロジェクション画像 を指でスワイプすることも出来る最新センサ技術も組み込んでいきます。

食材品質試験用の小型分光計の開発

フ ラウンホーファーIPMS(フォトニック・マイクロシステム研究所)は、水分、糖分、澱粉、脂肪 分やタンパク質の量を測定出来る小型分光計を開発しました。サイズは角砂糖よりも小さく、広帯域の波長光を照射し、反射される近赤外線の波長から成分量を 測定します。また、シリコンウェハに光学ギャップと格子を直接組み込むことにより、安価で大量生産に適した生産技術を採用しています。

潜在的振動エネルギー量の解析装置

セ ンサや無線伝送レシーバーなどの低電力消費マイクロデバイスを、温度や圧力の勾配、振動、気流な どからのエネルギー源を用いて作動させるための技術開発が進んでいます。フラウンホーファーIIS(集積回路研究所)では、振動エネルギーの自動記録装置 を開発しました。加速度センサを用いて振動パラメータを測定、GPSによる位置情報とともSDカードに保存します。測定データをもとに、ピエゾ素子などの 振動変換素子の設計に役立てることが可能です。

長期使用のための人工股関節の開発

フ ラウンホーファーIPA(生産技術・オートメーション研究所)は、骨同様の弾性率をもつ全非金属 人工股関節とその手術用ツールを開発しました。人工股関節の臼蓋側には炭素繊維強化PEEK樹脂、大腿骨頭にはセラミック、さらに骨との境界面にはヒドロ キシアパタイトを使用し、骨細胞と人工関節表面構造との融合を確実にしています、また、手術時の位置決め、調整、除去などを簡易かつ最適に行うために、使 い捨てのコレット型のピンを用いたサイズ測定ツールも開発しました。

インテリジェント空中監視システム

フ ラウンホーファーIMS(マイクロエレクトロニックサーキットシステム研究所)は、視界の悪い状況でも3次元情報を取得し伝達する無人ミニヘリコプター型 ロボットを用いたインテリジェント空中監視システムを開発しました。群知能ロボットのCMOSセンサが効率的に距離を測定、各ピクセルの高解像度な距離情 報を伝達し、障害物や他ロボットの衝突を回避します。また、日光などの干渉光に妨害されにくい差分測定を採用。イベント会場での事故状況把握、災害救助な どへの応用が期待されています。

2012年4月

小球噴射によるセラミックの歪み補正 (Fraunhofer IWM)

 厳 しい使用条件に耐えうるセラミックが金属部品の代替として注目されていますが、薄板状セラミックの製造は加工が困難かつ高価であることが問題です。フラウ ンホーファーIWM(材料メカニズム研究所)とフラウンホーファーIPK(物理計測技術研究所)は、製造過程で歪んだ薄板上セラミックの形状を小球噴射で 整えるプロセスを開発しました。小球の大きさ、速度、数などのパラメータを、それぞれの材料加工に最適になるよう調整し、板バネや凹面鏡などのプロトタイ プ製造や、簡単な形状の部品の連続生産を可能にしました。

総括的安全性の検討コンセプト (Fraunhofer EMI)

フ ラウンホーファーEMI(エルンスト・マッハ研究所)は、建造物や構造物の総括的安全性を予測するコンセプトを開発しました。荷重やショックの影響を現場 で検討するだけではなく、有限要素解析により検討結果の有効性をチェックし、さらには様々な想定シナリオもシミュレーション可能です。トンネルや高層建造 物、さらには都市計画への貢献が期待されています。

船舶スクリューの材料検査システム (Fraunhofer ITWM)

フ ラウンホーファーITWM(技術・経済数学研究所)は、船舶スクリューの内包異物や溶接ミスを検出するための可動型超音波検査システムを開発しました。複 雑な部材の非破壊検査が可能で、最厚450mmのアルミニウム青銅製スクリューを10 cm/s の速度でスキャンし、数mmの亀裂を検知することが出来ます。

3D都市計画ツール (Fraunhofer IAO)

フ ラウンホーファーIAO(労働経済・組織研究所)は、通常2次元的な騒音シミュレーションデータなどを3次元化した都市計画ツールを開発しました。地図上 で5mの高さまでの位置を自由に選択した騒音レベルのシミュレーションが可能で、他にも人の流れのシミュレーションや窓の最適配置など、都市・建造物計画 への応用が可能です。

非接触発電システム (Fraunhofer IKTS)

フ ラウンホーファーIKTS(セラミック技術・システム研究所)は、ペースメーカーなどに利用可能な、無配線で電気エネルギーを供給できるシステムを開発し ました。ベルトなどに装着可能な小型の体外送信部において回転磁界を発生させることにより、体内の受信部の磁性体が回転し発電します。インプラントや薬の 投与量制御デバイスなどに使用可能な非接触エネルギー供給や、建設業界における密閉箇所への電気供給としての応用が期待されています。

電気自動車部品の最適配置の選択 (Fraunhofer IZM)

電 気自動車では、周波数変換器からの電磁波干渉のために発生するラジオ波へのノイズが問題になっています。フラウンホーファーIZM(信頼性・マイクロイン テグレーション研究所)は、車部品の最適配置によりノイズを低減するためのツールと方法論を確立しました。自動車部品のサイズ、配置、方向、形、シールド 性などを考慮しシミュレーションを行い、電磁波の干渉を最小限に抑えるコンセプトを提案します。

2012年3月

植物性の肉代替品の開発

フ ラウンホーファーIVV(プロセス技術・パッケージング研究所)は、小麦や豆を原料とする植物性の肉代替品を開発しました。食品アレルギー対策として、 様々な材料の組み合わせでの製造方法を準備。水と植物タンパクを加熱処理した後ゆっくりと冷却するなどの新しい製法により、実際の肉に近い質感を再現しま す。

インプラントによる静脈弁

フ ラウンホーファーIPA(生産技術・オートメーション研究所)は、ポリカーボネートウレタン素材人工静脈弁の自動生産設備を開発しました。ポリカーボネー トウレタンの高耐荷力と柔軟性という特徴を生かし、ポリマーのショア硬さを変化させつつ、自由形状を持つ3次元構造を作成します。

群知能の物流への応用

フ ラウンホーファーIML(物流・ロジスティック研究所)は、群知能により物流ロジスティックを改善するシステムを開発しました。エージェントベースのソフ トウェアとMarco Dorigoのアリアルゴリズム、さらにハイブリッドセンサを使用し、分散制御される50台の無人車両Multishuttle Moves®が他の車両と干渉しない目的地までの最短ルートを選択します。

環境に優しい洗剤

フ ラウンホーファーIGB(境界層・バイオプロセス技術研究所)は、再生可能な資源である菌類やバクテリアからバイオテクノロジー技術を用いて界面活性剤を 生成する技術を開発しました。石油から人工生成された界面活性剤に比べ、構造に多様性があるため分解されやすく、毒性も低いことが特徴です。

軽量鉄道車両部品の開発

フラウンホーファーICT(化学技術研究所)は、鋼やアルミの代替材料となるポリウレタンベースのサンドイッチ構造材を開発し、使用条件の厳しい鉄道車両のディーゼルエンジンカバーを試作しました。重量は35%以上軽減され、コスト低減にもつながります。

ワイン発酵酵母検出システム

野 生酵母で造られたワインの方が好まれる傾向にありますが、野生酵母の多種多様性がワイン製造時の大きなリスクとなっています。フラウンホーファー IME(分子生物学・応用生態学研究所)は、抗体反応により不適切な酵母の存在を素早く検出出来るハンディタイプの検出システムを開発しました。

2012年2月

自らルートを選択し地図を作製するロボットの開発

人 間がアクセスしにくい環境における移動ロボットの活用が進んでいます。フラウンホーファーIOSB (オプトエレクトロニクス・システム技術・画像処理研究所) は独自のアルゴリズムとマルチセンサデータを利用した、データにない地形の自立的認識とマッピングを行う移動ロボットを開発しました。車輪の回転、加速 度、外界物との距離認識をセンサデータにより行い、さらにカメラとレーザスキャナによる環境データがマッピング作業をサポートします。

既存のITネットワークを利用した安価なワイヤレスネットワーク

フラウンホーファーFOKUS (オープン通信システム研究所) が開発したワイヤレスバックホールWiBAK技術により、農村地域のIT化が容易になりました。
既存の技術とWiBackルーターの組み合わせにより、維持管理の容易な広範囲での無線システムを安価で構築することが出来ます。

青果市場のゴミからのバイオガス燃料生成

大 きな市場や食堂からのゴミから生成したバイオガスをに高圧で圧縮し車の燃料として利用するシステムを、フラウンホーファーIGB (境界層・バイオプロセス技術研究所) が開発しました。ゴミは多種多様な微生物を使い二段階に発酵され、最終的には2/3メタン1/3 CO₂となります。また、マネージメントシステムにより微生物の組み合わせやpHをコントロール出来、安定したガス生産が可能です。

入力された言葉の意味を解析する検索ツール

フ ラウンホーファーIAIS (インテリジェント分析・情報システム研究所)は、„Smart Semantics“技術を用いた、入力語の意味により検索を行うツールを開発しました。学習し、パターン認識するツールは、検索用語や文章の解析を行い ホームページを分類することによって、単語のみの検索のような型にはまった結果ではなく、検索用語の意味による検索結果を提供します。

建物の排水と廃熱を利用したトマト栽培

フ ラウンホーファーUMSICHT (環境・安全・エネルギー技術研究所)では、建物の屋上を有効利用し野菜の近地生産を行うための様々な技術を検討開発しています。ドイツの非住宅建造物の 屋根を総計すると12億m²(1200km²)。1/4を野菜栽培に使用した場合、産業排出量の80%に当たる2800万トンのCO₂が吸収されます。ま た消費者に極めて近い場所での生産となるため、輸送費の削減にもつながります。

LTEの周波数シェアリング

フ ラウンホーファーHHI (ハインリッヒ・ヘルツ通信技術研究所) は、スマートフォンやタブレット使用により拡大するデータ通信量の問題を回避するためのLTE周波数シェアリング技術を開発しました。無線周波数の使用場 所を分散的にコントロールするアルゴリズムを用いて複数のプロバイダが周波数や設備をシェアするこのシステムにより、費用の削減だけでなく、カバーエリア 間の滑らかな切り替えが見込まれています。

2012年1月

空を擬似的に表現した照明

フ ラウンホーファーIAO(労働経済・組織研究所)は、空を擬似した天井の照明デザインを開発しました。天井のLED照明から30cm下に拡散ホイルを設置 し柔らかい光を再現、34560個のLEDを使用した34㎡のバーチャルスカイをプロトタイプとして製作しました。先行研究における雲の動きと集中力との 関連性の結果を用いて、新しい職場照明のデザインとして提案しています。

ATP検出用ナノセンサ

フ ラウンホーファーEMFT(モジュール固体技術研究所)は、検出用色素を安定的に結合させたナノ粒子を用いてナノセンサを開発しました。ATP検知用の色 素を用いて、培養細胞の状態を確認出来ます。同様の技術により酸素濃度や毒性アミンなどの検出も可能で、医療診断分野やバイオテクノロジー、環境解析など 幅広い応用が期待出来ます。

作業工程の直接データ取得

作 業工程の最適化、効率化は工場における最大の課題です。フラウンホーファーIFF(ファクトリーオペレーション・オートメーション研究所)の開発した、 マッチ箱サイズのセンサを埋め込んだ腕抜き型のセンサウェアでは、着用して通常の作業を行うことにより、作業員の動きや位置を正確に検出することが出来ま す。組立工程の解析やエルゴノミックな作業場の提供に役立てられます。

消防シミュレーションツール

フ ラウンホーファーFIT(応用情報技術研究所)は、センサ・センサノードの組み合わせなどの新技術の消防作業への導入を検討する際に、物理的なプロトタイ プを製作する前段階で技術の有効性などを試験することが出来る、段階的シミュレーションの方法とツールを開発しました。

高速CMOSセンサ

微 弱光でのCMOSイメージセンサのリードアウト速度を改善するため、フラウンホーファーIMS(マイクロエレクトロニックサーキットシステム研究所)は Lateral Drift-Field Photodetector(LDPD)を開発しました。拡散型検出器に比べ電荷の蓄積を速く行えるため、リードアウト速度が向上、3D—TOFイメージ ングなどの高速アプリケーションに最適です。また、標準0.35μmのCMOS製造過程に簡単な変更を加えるだけで加工が可能なため、既存の製造設備を使 用することができます。

乳精タンパクを用いたコーティング

食 品のパッケージングでは、酸素、湿度や化学および生物物質汚染から内容物を守るバリアとして、現状ではエチレンビニルアルコールなどの石油化学製品が使わ れていることがほとんどです。フラウンホーファーIVV(プロセス技術・パッケージング研究所)は、乳精タンパク膜を用いた薄膜バリア層を開発。持続性の ある材料で、Roll to roll 方式で経済効率よく生産可能で、環境にも優しいバリアを実現しました。