リサーチニュース 2013

2013年12月

バイオマーカーの早期かつ精密な特定を行う完全自動装置
フラウンホーファーIZI(細胞療法・免疫学研究所)

電磁波攻撃を回避する測定器
フラウンホーファーINT(自然科学技術動向分析研究所)

歩行技術をリアルタイムで評価し足の負傷を未然に防ぐスポーツシューズ
フラウンホーファーIPMS(フォトニック・マイクロシステム研究所)

熱電素材をキログラムスケールで生産
フラウンホーファーIPM(物理計測技術研究所)

自動車製造のためのより頑丈な成形加工機器
フラウンホーファーIPT(生産技術研究所)

事故・災害現場での迅速な判断と適切な処置を手助けする電子システム
フラウンホーファーFIT(応用情報技術研究所)

転送フォーマットを迅速かつ容易に検査可能にする分析器
フラウンホーファーHHI(ハインリッヒ・ヘルツ通信技術研究所)

2013年11月

身体状態を計測する衣服

フラウンホーファーIIS(集積回路研究所)は、着用した衣服でストレス度、体調、緊張やリラックス度の指標を示すシステムを開発しました。布に組み込まれた電極、上半身の弾性バンドにより呼吸、脈、心拍のような継続的な物理的身体信号を計測。取り外し可能な電子ユニットが生データを脈や呼吸周波数として換算し、データを外部端末へ送信します。高齢者用フィットネスプログラムや患者のリハビリテーションプログラムへの活用が期待されています。

安全性の高いアンドロイド用アプリストア

フラウンホーファーAISEC(応用・統合セキュリティ研究所)は、アンドロイド用の悪質なアプリを自動的に除去する新しいアプリストアを開発しました。セキュリティフィルタはアプリ形態で、企業のITアーキテクチャのバックエンドに直接アクセスし、このアプリを通して新しいアプリの検索およびダウンロードを行います。利用者の気づきにくい方法でデータを抜き取るなどの機能を含む悪質なアプリのダウンロードを防ぎ、企業のIT部署が許可したアプリのみ使用出来るよう設定可能です。

マルチスペクトルカメラを用いた癌組織の可視化

フラウンホーファーIPA(生産技術・オートメーション研究所)の医療とバイオテクノロジー分野での自動化のためのフラウンホーファー・プロジェクトグループPAMBは、マルチスペクトラルカメラで手術中に腫瘍を可視化する技術を開発しました。選択的に癌組織に付着する蛍光分子を手術前に注入し、手術中に蛍光波長をマルチスペクトルカメラで観察することで、識別困難な癌細胞のクラスタを視認できます。

赤外線利用で太陽光発電システムの効率を向上

フラウンホーファーISE(太陽エネルギーシステム研究所)は、従来利用されていなかった赤外線を発電に利用する太陽光発電システムを開発しました。セル背面にナトリウムイットリウムフッ化物からなるアップコンバータを配置し、シリコン系太陽電池に利用。この技術により太陽光の利用効率を40%に向上させることが出来ます。

鋼繊維補強コンクリートの高速品質検査

フラウンホーファーITWM(技術・経済数学研究所)は、鋼繊維補強コンクリートの品質検査を高速で行うソフトウェアを開発しました。約80億画素のCTスキャンデータをもとに、確率論を利用してコンクリート試験片内の繊維分布や繊維方向を高速で計算します。

有機EL用自動インクジェット印刷

フラウンホーファーIAP(応用ポリマー研究所)はロボットを用いた有機分子の自動インクジェット印刷システムを開発し、有機EL曲面ディスプレイを製作しました。この技術により、有機EL照明や有機太陽光発電セルの産業レベルの生産が可能になります。

高分子ナノコンポジット材料を効率的に製造

フラウンホーファーICT(化学技術研究所)は、高分子ナノコンポジット材料を製造中に評価する手法を開発しました。樹脂混合時にセンサが測定する物理データををもとに混合度、粘度、粒子分布などをコンピュータで解析し、作業機械の操作にフィードバックすることにより、ナノ粒子分布の最適化や設計通りのナノ粒子ネットワークの形成が可能になります。

2013年10月

ナノカプセルを用いたドラッグデリバリー実験

フラウンホーファーIAP(応用ポリマー研究所)は、癌細胞へ局所的に抗がん剤を放出するドラッグデリバリー技術を開発中です。球径200-250 nm の疎水性のナノカプセルで抗がん剤をターゲットとなる組織へ運搬、放出。さらに、ナノカプセルの利用により細胞内への薬物取込み量が増加し、In Vitroの実験でカプセルを使わない場合に比べ約5倍の効果を実証しました。

インクジェット印刷用バイオインク

フラウンホーファーIGB(境界層・バイオプロセス技術研究所)は、インクジェット印刷による成形加工用のバイオインクを開発しました。バイオインクには細胞と生体組織マトリックスを含んだハイドロゲルを使用し、軟骨や脂肪細胞などの異なる硬さ、膨潤性を持つ人工組織の製産に対応することが出来ます。

大小部品のCTスキャン技術

フラウンホーファーIIS(集積回路研究所)のレントゲン技術開発センターERZTは、自動車や航空機の試作品設計データの比較などに応用可能な、0.8mmの高解像度を持つ産業用途の大型コンピュータ・トモグラフィーを開発しました。また、樹脂や生物サンプルなどの小型部品用を0.2mmの解像度でスキャンする、電子レンジサイズの小型CTスキャナーも開発しました。

Lab-on-a-Chipの量産設備開発

フラウンホーファーIPT(生産技術研究所)は、微量液体の解析を完全自動化するLab-on-a-Chipの市場化を図るEUプロジェクトにおいて、Roll to Rollやインクジェットを用いた、Lab-on-a-Chipに必要な光学部品や電気的配線などを任意に製作できる量産プラットフォームを開発しています。

量子カスケードレーザーを用いた簡易飲料水試験

フラウンホーファーIAF(応用固体物理研究所)は、簡易飲料水試験に使用出来る赤外線吸収スペクトル検査システムを開発しました。水分子の赤外線吸収のため実用化は困難とされていましたが、高出力の量子カスケードレーザーを用いることで実現。靴箱程度の大きさの検査機器で自動計測が可能です。

環境に優しい防炎性樹脂

フラウンホーファーLBF(信頼性・マイクロインテグレーション研究所)はハロゲンフリーで様々な使用条件を満たす防炎性樹脂を開発しました。繊維性樹脂と防炎性樹脂を合わせて押出しにより成形。温度変化や洗濯など、使用分野における条件に合わせて防炎性樹脂素材を選択出来るため、輸送、建設、電気電子部品など幅広い分野での応用が期待されます。

太陽光パネルの寿命予測

フラウンホーファーIWM(材料メカニズム研究所)は、雪、温度、風などの外的環境変化による機械的負荷を考慮した、太陽光パネルの寿命を予測する手法を開発しました。パネル全体にセンサを取り付け、共鳴周波数の変化などを計測。これらの計測データと数値シミュレーションを組み合わせ、例えばセル接合樹脂のUVなどによる材料疲労が、従来の予想以上に寿命に影響を与えることがわかりました。

2013年9月

光学センサ測定によるワイン用ブドウの選別

フラウンホーファーIOSB(オプトエレクトロニクス・システム技術・画像処理研究所)は、光学センサを用いたワイン用ブドウの選別ソフトウェアを開発しました。糖分子と光の屈折率の関係から形状と色の解析を行い、異物認識だけではなく色味により熟成度を測定。ワインに最適なブドウの選別を簡易に行うことが出来ます。

小惑星の軌道偏向モデル

高速動力学を扱うフラウンホーファーEMI(エルンスト・マッハ研究所)では、高速でロケットのような重質量物体を衝突させ中サイズの小惑星の軌道を逸らす方法を、実験モデルにより検討しています。振り子とアルミ弾丸の衝突を高速カメラとレーザー干渉計で測定。ロケットの運動量の伝達だけでなく、衝突時の小惑星の材料欠損による反動が小惑星自身の軌道を変更するターボチャージャーの役割を持つことが確認されました。

より正確な樹脂材料試験の確立

フラウンホーファーLBF(構造耐久性・システム信頼性研究所)は、一点荷重ではなく多軸荷重がかかった場合の応力を予測出来る樹脂材料試験を開発しています。射出成形により様々な樹脂材料の試験片を作成し、液体を試験片に流し込み圧力が内部から均一にかかる状況などを再現。より正確な材料の寿命や疲労予測が可能になります。

電子走査アンテナを用いた船舶用レーダシステム

フラウンホーファーFHR(高周波物理・レーダー技術研究所)は、高送信電力が必要な従来の回転アンテナ型のレーダシステムの代替として、電子走査を用いた船舶用レーダシステムを開発しました。干渉信号処理を用いて障害物の大きさ、位置、距離を迅速に計算します。省電力であるだけでなく、リニアアレイ配置で維持費を抑えたシステムです。

ミニソーラーセル付きセンサモジュール

フラウンホーファーIMS(マイクロエレクトロニックサーキットシステム研究所)は、 特定用途向けIC(ASICs)上にミニソーラーセルを組み込んだセンサモジュールを開発しました。外部電力の要らないワイヤレスセンサネットワークとして、農牧地の湿度や日照などのデータの取得、送受信を行う農業用システムに応用していきます。

自由度の高いポストプロセッシングが可能な撮像システム

フラウンホーファーIIS(集積回路研究所)は、ポストプロセッシングにより被写界深度や遠近感を任意に決定出来る撮像システムを開発しました。30cm四方の枠にアレイ配置した16個のカメラで撮像された画像から、対象物までの距離をソフトウェア上で計算し、画角や被写界深度を変更することが出来ます。


振動センサ付き在庫管理用無線クリップ

フラウンホーファーIZM(信頼性・マイクロインテグレーション研究所)は、遠隔からでも製品の在庫数を正確に把握するための在庫管理用無線クリップを開発しました。無線クリップは無線モジュール、マイクロコントローラー、バッテリー、マイクロ振動センサからなり、保存されたIDデータを定期的に中央管理システムに送信。振動センサで製品の動きを検知し在庫データ内で他からのアクセスをブロックすることにより、オンラインとリアルショップでの購入が同時に行われてしまうような問題を回避します。

2013年8月

睡眠解析デバイス用ソフトウェア

フラウンホーファーIGD(コンピュータグラフィックス研究所)は、睡眠の長さや質を計測する携帯型スマートウォッチ用ソフトウェアを開発しました。スマートウォッチ内の加速度センサにより計測された呼吸や脈などのミクロな動き、れん縮などのマクロな動きのデータから、独自のアルゴリズムで睡眠状態を解析します。将来的には糖尿病や癲癇などの症状である昏睡状態の検知にも応用する予定です。

360度パノラマ画像撮影用カメラ

フラウンホーファーHHI(ハインリッヒ・ヘルツ通信技術研究所)は360度のパノラマ画像が撮影可能なカメラOmniCam360を開発しました。同じ遠近感を持つ10個のカメラが星形に並べられ、それぞれのカメラが異なる視角で撮像。較正なしで連続性のある画像が簡単に得られる、軽量かつコンパクトなカメラです。

ハイパースペクトル画像解析ソフトウェア

フラウンホーファーIFF(ファクトリーオペレーション・オートメーション研究所)は、上空から撮影したブドウ畑のハイパースペクトル観測用のソフトウェアと数値モデルを開発しました。分子の吸収光波長の特異性より画素ごとの生化学的構成を把握。収穫の最適化や病害の早期検知に役立てることができます。

卓上無配線送電システム

フラウンホーファーENAS(エレクトロ・ナノシステム研究所)は、卓上で携帯デバイスや照明などに無配線送電するシステムを開発しました。卓板に内蔵されたプリント基板に磁場を発生させるためのコイル状アンテナを多数配置。送電対象物を電気的ノイズとして検知させ、送電が必要な部分のアンテナのみを通電させます。アンテナと対象物IDタグ間のデータ通信を用いて、より多くの電磁放射を防ぐ技術も開発中です。

レーザ熱処理による部材の最適軽量化設計

フラウンホーファーIWS(材料・ビーム技術研究所)は鋼板のレーザ表面熱処理を用い、局所的に強度を向上させる軽量化設計を提案しています。また、数値シミュレーションにより衝突時の変形を予測し、設計の最適化を行うことが出来ます。

MPEG-DASHプレーヤーで複数のデバイスへ同期配信

フラウンホーファーFOKUS(オープン通信システム研究所)は、MPEG-DASHをブラウザで再生するプレーヤーFAMIUMと複数のデバイスへ同期配信可能なマルチスクリーン・フレームワークを開発しました。Live streamingのよりダイナミックな活用が期待されます。

ダイアモンドコーティングのカーボンナノチューブ

フラウンホーファーIWM(材料メカニズム研究所)は、シリコン酸化膜を用いてカーボンナノチューブを損傷せずにダイアモンドコーティングを生成する方法を開発しました。このダイアモンドコーティングのカーボンナノチューブは極薄かつ堅牢なため、切断による材料損失の少ないウェハ切断ワイヤへ応用可能です。

2013年7月

アプリのセキュリティーチェックツール

フラウンホーファーSIT(安全情報技術研究所)は、アプリのセキュリティーチェックシステムAppicaptor-Testframeworkを開発しました。アプリのセキュリティーホールや有害ソフトを、OSに関わらず認識することが出来ます。

太陽光パネルモジュールの効率とデザイン性を向上させる技術

フラウンホーファーIOF(応用化学・精密機械工学研究所)は、絶縁層と半導体の間に屈折率の異なるTCO(透明導電膜)を施した太陽光パネルモジュールを開発しました。光の利用効率を向上させると共に、着色によりデザインの幅を広げることが出来ます。

3Dプリントによる水中推進アクチュエータ製作

フラウンホーファーIPA(生産技術・オートメーション研究所)は、フレキシブルで弾性のある合成樹脂を用いた水中推進アクチュエータを開発しました。熱溶融樹脂法を用いた3Dプリントにより生成したポンプ形状のアクチュエータは、機械的に水を押し出す際の推進原理を利用して前進します。製作用に開発された産業ロボットを用いて91.4 x 61 x 91.4 cm サイズまでの成形が可能です。

コーティングの耐食性試験

フラウンホーファーIWM(材料メカニズム研究所)は、石油施設にある設備の管面コーティングのための耐食性試験プログラムを開発しました。使用環境条件をリアルに再現し、機械的負荷、海水などの化学的負荷への耐性を検査することが出来ます。面防食処理の寿命予測への利用が期待されています。

ワイヤーロープ検査システム

フラウンホーファーIZFP(非破壊試験研究所)は、漏れ磁束によるワイヤーロープの検査システムを開発しました。巻付き型ではなく検査プローブがロープ周囲を回転しながら進み、同時に測定のための磁界を発生し、表面だけでなく内部の亀裂およびその角度も検知可能です。

ピックリング用テープ

フラウンホーファーIFAM(生産技術・応用マテリアル研究所)は、アルミニウム部品の修理や部分的処理のためピックリング(酸洗浄)テープを開発しました。市販のテープと同様扱いが容易であると同時に、テープの洗浄性を保つために水溶性ポリマーをベースにした粘着成分を開発。廃水の発生もなく、安全且つ環境にも優しい方法です。

繊維複合材料部品へのRFIDタグの使用

フラウンホーファーIIS(集積回路研究所)は、UHF周波数を用いて炭素を含む繊維複合材料にも使用出来るRFIDタグを開発しました。

2013年6月特別号

フラウンホーファー研究機構の2013年年次総会が開催され、研究者たちに賞が授与されました。今年は1つのHuman-Centered Technology賞、3つのフーゴ・ガイガー賞、3つのヨゼフ・フォン・フラウンホーファー賞が選ばれました。

詳細はPDFファイルをご覧下さい。

2013年6月

ドアシーリングの自動調整システム

フラウンホーファーIMS(マイクロエレクトロニックサーキットシステム研究所)は、高気密建造物のドアシーリングの自動調整を行うシステムを開発しました。室内の二酸化炭素濃度が一定以上と検知されると、微細モーターとバネを作動させることによりドアのシーリングを持ち上げ吸気が可能になると同時に、空調を作動させ排気を行います。湿度調整も行われるため、エネルギー効率と室内空気の質の最適バランスが得られるシステムです。

内燃機関のシリンダ滑り面加工

5つのフラウンホーファー研究所が参加しているTRIBOMANプロジェクトにおいて、フラウンホーファーIWU(工作機械・変形技術研究所)は高精度ボーリングを用いて質のよい内燃機関のシリンダ滑り面を得る加工技術を開発しました。切削力により結晶微細化を行い加工中に材料を硬化させるため仕上げ精度が大変良く、慣らし運転時間を削減するだけでなく、エネルギー消費を抑え二酸化炭素の削減にも繋がります。

SNS上のプライバシー保護管理の検討

フラウンホーファーSIT(安全情報技術研究所)は、より良いオンライン上のプライバシー保護管理手法作成のために、ユーザーへのアンケートと独自開発の解析ソフトウェアを組み合わせソーシャルネットワークメディア利用について調査を行いました。プライバシー保護管理の弱点を指摘するだけでなく、プライバシー保護ツールの効率的な設計を支援することが目的です。

環境負荷の少ない航空機設計

フラウンホーファーIBP(建築物理研究所)とフラウンホーファーIGD(コンピューターグラフィックス研究所)は、航空機の設計段階で環境負荷を予測するためのプログラムを開発しました。ライフサイクルアセスメントに基づいた参照部品情報を集めたデータバンクを用い、エコバランスを考慮した材料や加工の選択が可能になります。

時間効率の良い木材接着技術

フラウンホーファーWKI(ヴィルヘルム・クラウディッツ木材研究所)は、乾燥および硬化の早い木材接着技術を開発しました。接着剤を両面に塗布した金属を通電させ、接着剤を加熱溶融し木材への浸透を促し、冷却によって硬化させます。接着に永続性があり、構造強度も向上させることが出来ます。

ロボットによるタービン翼修理の自動化

フラウンホーファーIPK(生産システム・デザイン技術研究所)は、タービン翼の修理および整備保全を短時間で行う自動化ロボットを開発しています。プロセスの自動化だけでなく、ロボットが加工セル内を動き複数の修理を行えるように設計。新しいタービン部品の製造方法のヒントにもなり得るものとして期待されています。

車椅子用無線通信モジュール

フラウンホーファーIOSB(オプトロニクス・システム技術・画像処理研究所)の支部であるフラウンホーファーAST(応用システム技術研究所)は、Bluetoothの無線接続経由で車椅子の操作や電池残量などの車椅子の機能状況データ通信を可能にする箱形小型モジュールを開発しました。スマートフォンで走行可能距離の確認、ナビゲーションシステムと組み合わせバリアフリーな行路や車椅子使用可能なトイレの検索なども可能で、車椅子利用者や高齢者の可動性を高めることを目指しています。

2013年5月

センサー粒子の変色による化学物質の検出

フラウンホーファーEMFT(モジュール固体技術研究所)は、変色により危険化学物質を感知する手袋を開発しました。繊維材料に塗布したセンサー粒子が特定の物質に触れると変色反応を起こし、ガス漏えいや食品の変質・劣化などの検査への応用が期待されています。

有機ELディスプレイの画素を直接電極に蒸着する技術

フラウンホーファーCOMEDD(有機材料・電子デバイス研究センター)は、電極に直接画素を蒸着した有機ELディスプレイを開発しました。画素は8μm²まで小サイズ化、またカラーフィルターが不要なため光の利用効率がよいことが特徴です。

ガマの建築材への応用

フラウンホーファーIBP(建築物理研究所)では、生育が速いガマの建築材料としての利用方法を研究開発しています。高密度でありながら水蒸気透過性、耐湿性、防炎性、防音性、断熱性がある上、堅牢な構造を持ち、屋根材や床材、ドア、窓枠などへの様々な応用が検討されています。

マイクロチップ型発振器の開発

フラウンホーファーIZM(信頼性・マイクロインテグレーション研究所)は、プログラム制御可能なマイクロチップ型発振器を開発しました。System on Chip設計と3次元積層を組み合わせ、面積とスイッチの消費電力を減少。1.5 mm²と小型で、現在は温度補正用のソフトウェアを開発中です。

クレジットカード利用停止ルール設定のためのソフトウェア

フラウンホーファーIAIS(インテリジェント分析・情報システム研究所)は、クレジットカード詐欺被害防止のためのソフトウェアMINTify ruleを開発しました。カード会社のデータベース上の最近の取引履歴を解析し、適切なルールを半時間~1時間で提示するシステムで、銀行により異なるセキュリティーレベルや使用顧客数を適度に設定出来ます。

照明モジュールの最適化と小型化

フラウンホーファーISC(ケイ酸塩研究所)は、市販の電池駆動式の照明モジュールの最適化を行いました。照明モジュールは2.4GHzの無線で各LEDの輝度を調整、色を選択し、状況に最適な雰囲気を作り出すもので、ソフトウェアを用いて光線の幅や色混合の質を最適化、安価な市販のレンズを用いつつレーザー技術を応用して各色LEDの焦点を合わせモジュールの小型化を達成しました。

2013年4月

マイクロアクチュエータを用いた電気音響変換器

フラウンホーファーIPA(生産技術・オートメーション研究所)は、極小の補聴器用にピエゾ素子を用いたマイクロアクチュエータによる電気音響変換器を開発しました。補聴器は、体外のマイクとバッテリー、外耳と中耳の間の光信号およびエネルギー中継デバイス、直径1.2mmの電気音響変換器で構成され、よりよい音質と簡便な操作を実現しました。

長寿命のリチウム硫黄電池の開発

フラウンホーファーIWS(材料・ビーム技術研究所)は、リチウム硫黄電池の充放電サイクル寿命を1400サイクルまで延ばすことに成功しました。負極は安定性の高いシリコン炭素化合物、正極は安価な硫黄、さらに正極と電解液との反応を妨げるために多孔質カーボンを使用。容量の増加や電池の軽量化が可能なため、自動車や携帯デバイスでの応用実現が期待されています。

移植片対宿主病対策としてのモノクローナル抗体使用の最適化

フラウンホーファーIZI(細胞療法・免疫学研究所)は、骨髄移植の際に起こる移植片対宿主病 (GvHD)を防ぐために、提供される骨髄にモノクロナール抗体を使用する方法を研究しています。移植前に細胞を修飾し、体内の健康な細胞を攻撃せずに癌細胞を攻撃する機能を残すように、様々なパラメータの調整を行っています。

高速路面レーザースキャンシステムの開発

フラウンホーファーIPM(物理計測技術研究所)は、路面の均一度を高速で測定するレーザースキャンシステムを開発しました。八角形のミラーが回転し、70度のスキャン角を0.15~0.3mmという高解像度で測定、全地球航法衛星システム(GNSS)により測定車の傾斜と位置データも得ることができ、最大スキャン速度時速100kmを達成しています。

倉庫管理マネージメントシステム

フラウンホーファーIFF(ファクトリーオペレーション・オートメーション研究所)は、外部倉庫の管理を簡易に行える倉庫マネージメントシステムを開発しました。RFIDチップを位置入力装置と部品に取り付け、さらに移動を感知する運動センサにより、位置情報を1mの精度で常に最新に保つことが出来ます。

太陽電池用封止材の圧着加工速度を向上

フラウンホーファーCSP(シリコン・太陽光発電技術センター)は、太陽電池用封止材の圧着加工の際、UV硬化を用いて架橋速度を上げ、同時に均一な封止材膜を形成する技術を開発しました。加工の短時間化により、製造コストの低下が期待されています。

アプリケーション開発支援プラットフォーム

フラウンホーファーIIS(集積回路研究所)は、新しい通信技術におけるプログラム処理モデルと開発プラットフォームを提供する、サービス・エンジニア・プラットフォームNSEB®を開発しました。全体のプロセスを4ステップ×8パーツで構成し、効率的なアプリケーション開発をサポートします。

2013年3月

手術用3Dシステムの開発

フラウンホーファーHHI(ハインリッヒ・ヘルツ通信技術研究所)では、3Dシステムの医療用途に向けての開発が進んでいます。解像度の向上(現在4K対応)やアイトラッキングによる裸眼3Dシステムの向上により、外科医による手術のシミュレーションにて2Dに劣らない使用感を得ただけでなく、作業の時間短縮および正確さの向上が確認されました。

海藻から断熱材繊維への加工

地中海海藻Posidonia oceanicaは、その難燃性、防カビ性および木材よりも高い断熱性により、建築用断熱材としての応用が期待されています。フラウンホーファーICT(化学技術研究所)は海藻の集塊から繊維を加工する方法を開発しました。加工の際に化学添加物が不要で、環境に優しい材料であることにも注目されています。

自動車工場の廃棄物を用いた暖房システム

フラウンホーファーIFF(ファクトリーオペレーション・オートメーション研究所)は、塗料、プラスチック、木材など自動車工場から出る全ての粉末廃棄物を暖房装置に利用するシステムを組み上げました。粉末焼却炉からの熱を利用した温水を暖房として循環させ、排ガスはフィルター設備で浄化。また、粉末の流入、撹拌および排出ガス量をCFDシミュレーションにより最適化しました。

土砂災害の早期警報システムのためのデータ処理

フラウンホーファーIOSB(オプトエレクトロニクス・システム技術・画像処理研究所)は、地滑りをより正確に予測するシステムを開発しています。地形、地質などの恒常的なデータと気象観測データ、気象予報などの変動的なデータを組み合わせることにより様々な影響による閾値を変化させ、地滑りの早期警報システムを構築することが目的です。

エネルギー消費最適化をアプリでわかりやすく

フラウンホーファーIWES(風力エネルギー・エネルギーシステム研究所)とフラウンホーファーISE(太陽エネルギーシステム研究所)、フラウンホーファーIIS(集積回路研究所)はエネルギー消費の最適化のためのオープンソフトウェアOGEMAを開発しました。アプリケーションソフトウェアを通して消費者と発電者を繋ぎ、電気料金の変化をもとに家電の最適使用時間を提案、各家庭の太陽光発電システムの電気を現時点で使用するか、グリッドに売却するかなどの最適選択も行えます。

カスタムメイドの防汚用炭素薄膜コーティング

フラウンホーファーIST(被膜・表面技術研究所)は、産業機械や設備の使用上の汚れを防ぐ炭素薄膜コーティングを開発しました。使用する材料や流体によって異なる元素を調整して添加し、表面エネルギーを下げ防汚効果を高めるとともに、耐食性および耐摩耗性にも優れたコーティングが可能です。有機物や無機物からの防汚が必要な乳産業などの食品加工、製産工場でのラッカー付着防止、製薬業界および燃料運搬などへ応用されます。

ソーラーパネルからの反射光を事前にシミュレーション

太陽光発電システムの増加と共に、設備での反射光により事故を誘発する可能性が危惧されています。フラウンホーファーFIT(応用情報技術研究所)は、ソーラーパネルの設置の際に太陽光の反射を任意の時間と方向にシミュレーションするソフトウェアを開発しました。事前に地図データや太陽光の年間にわたる日照データをもとに、ソーラーパネルからの反射光を3Dで確認出来ます。

2013年2月

電子照射による種子の虫害/病気予防

近年、環境保護のために農業における化学合成農薬の使用量の減少が求められています。フラウンホーファーFEP(電子ビーム・プラズマ技術研究所)は、低エネルギーの電子を照射し菌類およびバクテリアのDNAを破壊する種子の処理方法を開発しました。素粒子は種子表面および種皮にのみ効果を及ぼすため、内部の胚乳種子には影響がなく発芽に問題がないことも、過去20年に渡る実証実験により証明されています。 

身体機能に合わせたトレーニングを提供するアームチェア

フラウンホーファーIIS(集積回路研究所)は、身体の機能や活動を計測するトレーニングチェアGEWOSを開発しています。内蔵センサー群により身体機能の計測を行い、無線通信を用いてテレビ端末へ情報を送信。トレーニングチェアはローイングマシンに変形可能で、テレビ画面上に表示される利用者に合わせた最適トレーニングプログラムを行うことが出来ます。 

スーパーマーケットのエネルギー消費最適化コンセプト

フラウンホーファーISE(太陽エネルギーシステム研究所)は、冷蔵・冷凍システムおよび照明の新しいコンセプトを構築し、スーパーマーケットにおけるエネルギー消費を年間20%削減することに成功しました。冷蔵各箇所を中央冷蔵システムに接続し、廃熱は3段階に分けて再冷システムに利用、さらに冬期には廃熱を暖房の一部として利用することにより、冷却費だけでなく暖房費の削減も可能です。 

カスタムメイドのシットスキーの最適化

フラウンホーファーIWM(材料メカニズム研究所)は、2014年のソチオリンピックに向けてクロスカントリーとバイアスロン用のシットスキーの開発を行っています。身体的障害の度合いおよび特徴が個々に異なるため、活動中の体の動きやストックにかかる荷重測定などをもとに、座席およびソリの軽量化を含めた形状最適化を行います。またソリと雪面の摩擦を最小に抑えるための特殊コーティングも開発しました。 

動画など大量データ通信の高速伝達

フラウンホーファーHHI(ハインリッヒ・ヘルツ通信技術研究所)は、高速データ通信が可能で且つ伝送遅延を低減した通信規格LTEと適正なブロックサイズを選べる動画圧縮規格HEVC (H.265) を組み合わせ、大きなデータ通信量に耐えうる技術の開発を行っています。

ガラスファサードの安全性の検討

フラウンホーファーEMI(エルンスト・マッハ研究所)では、近隣での爆発などの衝撃に対するガラスファサードの強度や安全性を、ショックチューブBlast-STARを用いて解析しています。 

電子政府の可能性を最大限に生かすコンセプト作り

フラウンホーファーFOKUS(オープン通信システム研究所)は、ICTのデンマークの官公庁への導入成功例をもとに、ドイツの官公庁に合わせた電子政府システムのコンセプトを構築しました。書類管理だけではなく、作業のモデル化、他の専門ソフトとの互換なども可能になり、現在は官公庁での実証実験が行われています。

携帯型の微粒子量計測装置

木材燃焼ストーブの流行と共に、空気中への微粒子放出規制が厳しくなっています。フラウンホーファーITEM(毒物学・実験医学研究所)は民間企業Vereta、クラウスタール大学と共同で携帯型排出微粒子計測装置を開発しました。エアロゾル光散乱法とエアロゾル光放出法を用いた2つのセンサとエレクトロメータを組み合わせ、微粒子量の正確な測定が可能です。