2019年プレスリリース

Fraunhofer IISB

パワーエレクトロニクス:ワイドバンドギャップ半導体用のセラミック基板

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Close-up view of a wide-bandgap device embedded by the Ceramic Embedding technology.

パワーエレクトロニクスの自動車や航空といった分野での応用では、スイッチングのスピードと確実性が要求されます。
フラウンホーファーIISBは、パワー半導体をセラミック基板に実装したパッケージングを開発しました。コストを抑えるためには高温での動作がカギとなりますが、チップを小型化することで冷却の効率を上げるために、現在普及しているPCBなどのパッケージでは熱安定性や通電容量が十分効果的ではありません。セラミック・パッケージであれば、高圧でも安定して動作し、高温にも強く、厳しい環境下でも長い寿命を保つ封止ができます。このパッケージに対する新しいアプローチは、寄生インダクタンスや温度制限といった物理的制約という問題も改善します。
回路板はダイボンド技術で銅の直接接合された(DBC)基板に実装され、空隙には耐熱材料を充填します。アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素など、個別のニーズに適し予算に応じた、様々なタイプのセラミックを使うことができます。SiC(シリコンカーバイト)などのワイドバンドギャップ半導体は小型でも高電流高電圧をスイッチングできるため、今後パワーエレクトロニクスの分野で需要が高まることが期待されます。

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Power Electronics: Ceramic Embedding Gives a Boost to Wide Bandgap Semiconductor Devices

Fraunhofer IPMS

Li-Fiを介したワイアレスTSN-光を介したワイアレスのリアルタイムコミュニケーションを実現

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3d rendering robotic arms with empty conveyor belt; Shutterstock ID 516050707; Fraunhofer Project Number: 515884; Job/Project: Presse Li-Fi Electronica; Ordering Party: WMS; Other:

コミュニケーションにおいては、スムーズに短時間で情報を転送するのが最善です。 オートメーション技術が導入されると、通信に対する需要はさらに高くなります。 そこでは、たとえば機械やドライブを互いに同期させるために、多くの場合、メッセージをマイクロ秒の範囲で送信する必要があります。 4G、LTE、W-LAN、または将来の5G無線規格などの今日の無線規格では、マイクロ秒レベルでの自動化に必要な待ち時間を達成できません。フラウンホーファーIPMSは、Li-FiとTSNを組み合わせて、リアルタイムでのデータ通信の安定性をワイヤレスで可能にしました。これにより、産業用ロボットや動的製造セルなどのモバイルアプリケーションは、TSNを介して無線でリアルタイムに通信できるようになりました。

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Wireless real-time communication via light - Wireless TSN via Li-Fi

Fraunhofer IWS

付加製造の微調整が可能になる新たなノズルとスキャナの開発を発表

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付加製造システム(Additive manufacturing system)は、従来の工作機械では製造できない非常に複雑な構造の部品にも対応できる可能性があります。しかし、産業用3Dプリンタを標準装備する工場はほとんどありません。コスト面だけでなく、非常に大きな挑戦でもあるからです。フラウンホーファーIWSはそれらの問題を解決するソリューションを開発しました。2019年11月にフランクフルトで開催された「formnext」において、レーザー粉体肉盛溶接を用いた局所溶解プールシールドノズルシステム「COAXshield」と、ノズルから出た粉体の流れの分析機器「LIsec」を出展しました。「COAXshield」のノズルヘッドは、パウダーノズルを包み込み、プロセスゾーンの周囲に「同軸の」保護ガスコーンを形成します。また、「LIsec」によりパウダーノズルの摩耗度などノズルの品質管理が大幅に簡素化されます。

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Fine-tuning for additive production

Fraunhofer IWS

KaSiLiプロジェクト:メイド・イン・ジャーマニーのEV車向けの革新的な薄膜バッテリーを開発

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「Research Fab Battery」のコンセプトのもと、ドイツの研究者たちは同じ容量を維持しながら、EV車やスマートフォンに適応する、従来のリチウムイオン電池よりも少なくとも70%以上電力を蓄電できる新しいバッテリーを開発しようとしています。ドイツ連邦教育・研究省 (BMBF) 助成のクラスター「ExcellBattMat」の一部であるドレスデンのExcellBattMatセンターのKaSiLiプロジェクトはフラウンホーファーIWS支援の元、新しい電極技術の研究を3年間行います。2019年11月1日、フラウンホーファーIWS、ドレスデン工科大学、ライプニッツの研究者は薄膜のシリコン層又はリチウム層で高エネルギー密度を実現する革新的なバッテリー電極の共同開発を開始しました。

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“KaSiLi”: Better batteries for electric cars “Made in Germany”

Fraunhofer IPMS

自動運転のためのLiDARテクノロジー

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自動運転車においては、人は乗客にすぎません。 車は独立して自ら操縦し、障害物と危険を認識します。光学センサーはドライバーの目となって車両の周辺環境を認識します。 フラウンホーファーIPMSは、小型で、同時に自動運転に必要な条件をすべて満たしながら、干渉なしに車両の周辺環境を確実に認識することができるマイクロスキャナーミラー(MEMSスキャナー)を開発しました。MEMSスキャナーは単結晶シリコンで作られているため、非常に頑丈で耐衝撃性があり、疲労現象がありません。費用対効果の高い半導体製造プロセスは、製造中のスケーリング効果を可能にします。 半導体チップのCMOS互換性により、既存のシステムへの高集積化も可能になりました。

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Car sensory organ - Research team at Fraunhofer IPMS develops scanning eye for autonomous driving

Fraunhofer IWS

高エントロピー合金 -商業ベースでの生産に向けた研究開発

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航空やタービン建設などさまざまな産業分野に革新性をもたらす新素材、高エントロピー合金(HEA)。5つ以上の構成元素がほぼ等量に混合配置された合金で、強度や高温特性を有し、鋼鉄やアルミなどの素材よりも軽量です。15年ほど前から商業レベルでの生産を目指し世界各国で盛んに研究が行われてきました。
例えば、アルミ、チタン、ニオブ、ハフニウム、バナジウムから成る高エントロピー合金は、耐熱性に優れているためタービンなどに適しており、発電施設や航空機の燃費を向上できます。別の素材を組み合わせれば、軽量性に特化した合金を作ることも可能です。
高エントロピー合金を大量生産に適したものとするべく、IWSでは付加製造プロセスを用いてさまざまなHEA組成物からサンプルを迅速に生成し、硬度、強度、およびその他の特性を自動的に決定する方法を開発しました。

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High entropy alloys for hot turbines and tireless metal-forming presses

Fraunhofer ILT

量子インターネットの実証に向けた国際プロジェクト「QFC-4-1QID」が始動

© Photo Fraunhofer ILT / Volker Lannert

複雑な計算やアルゴリズムを非常に短時間で算出する量子コンピューターは、テクノロジーに革命を起こす技術として注目されています。 将来、複数の量子コンピューターが安全な方法で量子インターネットに接続されるようになり、分散型量子計算などの新しい可能性を切り開くでしょう。
フラウンホーファーILTは、デルフト工科大学の量子コンピューター研究機関「QuTech」と協力してガラスファイバーを使った量子情報の長距離伝達を研究しています。共同研究の第1フェーズは3年間で250万ユーロの研究費をあてています。
プロジェクトでは、量子情報を壊さずに個々の光子の波長や周波数を変換する技術を開発中です。長距離の通信を行うためには、光子をダイヤモンドNV(窒素-空孔)センターの637nmから1500 nm~1600 nmの通信波長帯に変換しなければなりません。量子周波数変換器の設計にはは、全体的な効率の高さやアウトプット時のノイズを最小限に抑えることが重要になります。
2022年に世界初の実証型量子インターネットとしてオランダの4都市を繋ぐことを目標に、プロジェクトは続く予定です。

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Putting quantum bits into the fiber optic network: Launching the QFC-4-1QID project

Fraunhofer ICT

プラスチックの循環経済

© Photo Fraunhofer UMSICHT

世界中では年間3.5億トンのプラスチックが生産されており、うち6500万トンがヨーロッパで生産されます。使用済みプラスチックの不適切な処理が、環境に悪影響を与える素材としてのイメージを強め、未来の材料としての可能性を閉ざしかねません。プラスチックの環境への放出を防ぐため、リサイクル可能なプラスチックや、残留物を出さずに分解処理が可能なプラスチックの開発が求められています。フラウンホーファーの5研究所による合同クラスター「Circular Plastics Economy」は、材料だけでなくそれに伴うエネルギーや経済の循環を考慮したリサイクル・チェーンを提案します。

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Circular plastics economy: Things are rolling smoothly for plastics

Fraunhofer IGB

環境にやさしい天然由来テルペンから生成するポリアミド

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フラウンホーファーIGDは、セルロース産業で廃棄されるマツやトウヒなどの残存材から抽出したデルタ-3-カレンを使ってポリアミドを生成する新しいプロセスについて特許を取得しました。バイオベースのポリアミド、カラミードR、およびカラミードSは、優れた熱特性を持ちます。カラミードS向けのモノマーは、既に100リットルスケールでの試験的な生産に成功しています。更に、バイオベースのラクタムを他の商用モノマーと合わせてコポリマーに合成することに成功しました。これにより透明性などの特性を変えることができ、応用の幅が広がります。

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Polyamides from terpenes: Amorphous Caramid-R® and semi-crystalline Caramid-S®

Fraunhofer IFAM

3D プリンター製のガスタービン

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フラウンホーファーIFAMは、シャフトを除く全てのパーツがパウダーベッド方式の金属3D プリンターで作製された1/25スケールの発電用ガスタービンモデルを開発しました。部品の最適化と電子ビームやレーザービーム溶融により、アルミニウム、鋼鉄、チタンを使った部品は68個と、3000近くある従来型の原型部品と比べてはるかに少なく、きわめて良好に動作します。
付加製造に関する技術や設備が集約されたイノベーションセンターICAMでは、選択的電子ビーム溶融(SEBM)、3D スクリーン印刷、融解フィラメント製造(FFF)などからお客様は最適な技術を選ぶことができるよう、あらゆる個別の課題に対応しています。

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Turbine from the 3D printer

Fraunhofer IWS

航空機を経済的に遮熱するコーティング技術

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フラウンホーファーIWSでは、航空機の経済性、耐久性、環境性向上のため、新しいセラミック遮熱技術を開発しました。イットリア安定化ジルコニア(YSZ)の懸濁液をスプレーすることで、優れたコスト効率でタービンブレードなどの航空機部品の素早いコーティングを可能にします。この手法は、1µm以下の粒子からなる懸濁液をスプレーすることで500µmの遮熱層を形成します。真空チャンバーを必要としないため、比較的安価に高速で航空機などの大型部品をコーティングすることができます。セラミックコーティングが施されたブレードの使用でタービンの動作温度が上昇し、燃料収率が向上することで大気汚染を軽減します。
また、航空業界のみならず半導体産業などさまざまな分野での応用も期待されます。

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Heat shields for economical aircrafts

Fraunhofer IPT

自律走行車用のソリッドステート型LiDARシステム製造のための自動組み立て装置を開発

© Photo Ibeo Autimotive Systems GmbH

運転支援システムと完全自律走行車のほとんどが、距離測定や異物検知にLiDARシステムを使っています。フラウンホーファーIPTは、ソリッドステート型LiDARシステムの自動組み立て装置を開発しました。この装置により、自動車産業界においてLiDARシステムはまもなく安価で製造されることが可能になります。プロジェクトパートナーのAixemtec社とLiDARセンサーで世界的な技術を誇るIbeo社の協力のもと、すでにAixemtec社のマシンにプロトタイプが組み込まれ、稼働を開始しています。

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Automated assembly system from Fraunhofer IPT and Aixemtec manufactures solid-state LIDAR systems for autonomous vehicles

Fraunhofer IFAM

幅広い用途での活用が期待される付加製造用金属粉

© Photo Fraunhofer IFAM

選択的電子ビーム溶融法 (SEBM)や選択的レーザー溶融法 (SLM)など、粉末床をベースにした付加製造では、これまで不活性ガスの噴霧により形成された比較的高コストの球体粉が使われてきました。今回新しく開発された鉄粉末は、従来の10%のコストで生産が可能です。他に、HDH(水素化脱水素)チタン粉末なども比較的安価に生産することができます。
このような金属粉は、粒子形状が不規則になるほどガスアトマイズ粉末と比較して流動性が低いことがこれまで予想されてきました。しかし、今回開発された鉄粉末は低コストの代替品として有用で、SEBMは幅広い流動性に対応します。
IFAMでは、新しい粉末のデザインやテスト、フィージビリティスタディなどを提供しています。さらに幅広く付加製造関連の技術を集約しているイノベーションセンターICAMでは、SEBMや3Dスクリーン印刷のほか、お客様のニーズに対応するさまざまなプロセスを提供します。

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Versatile and inexpensive: Alternative powders developed for the additive manufacturing of steels

Fraunhofer IMS

送電線の安全を監視するセンサーモジュール

© Photo Fraunhofer IMS

気候変動への対策という観点から、エネルギーの効率化と再生可能エネルギーによる電力の重要性が高まっており、風力や太陽光、バイオガスによる何千もの発電施設が既に大量のグリーン電力を生み出しています。中でも近年飛躍的に成長してきた風力発電では、高圧送電線の最適化や異常の迅速な検知が最も重要な課題となっています。フラウンホーファーIMSの開発した自律動作型センサーモジュールは、エネルギーを自給しながら運転パラメーターを監視し、ISM周波数バンドで収集データを送信します。

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Condition Monitoring of Overhead Lines

Fraunhofer IWS

従業員の健康を守る粉塵吸引システム

© Photo Fraunhofer IWS

リモートレーザ加工は自動車セクターなどでプロセスを高速化してきました。しかし、このような高速処理は、人体に有害な微粒子やガスを排出するものでもあります。プロセスが一巡し製造ラインを開く際には、従業員の肺を害する粉塵が流出してしまいます。フラウンホーファーIWSは、大学や企業との共同プロジェクト「CleanRemote」で、空中で異なる動きをする様々なサイズの粒子について、ミリ秒単位で動くレーザーの影響も考慮し2年半にわたり研究を進めてきました。その結果、粉塵吸引装置付きのリモートレーザ加工システムを開発しました。
カーボン部品と接合するための金属部品の表面加工など、遠隔レーザー加工は中小企業をはじめとした市場に今後ますます進出するでしょう。「CleanRemote」で開発された吸引装置は空気中の粒子やガスを軽減し、労働環境の安全を守ります。

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Clean lungs thanks to laser process exhaustion

Fraunhofer IMS

センサーのための機械学習システム

© Photo Fraunhofer IMS

洗濯機から血圧測定器まで、今日あらゆる電化製品にマイクロコントローラが使われています。フラウンホーファーIMSはマイクロコントローラやセンサーに人工知能を搭載し、クラウドや高性能コンピューターとの接続なしにライブラリを使って学習し、手書きの文字やジェスチャーを認識します。通常はPythonを使っており、マイクロコントローラなどに埋め込まれたシステム上でパソコンを使わずに人工ニューロンをトレーニングすることはできません。機械学習のライブラリをC言語でプログラミングされたフラウンホーファーIMSの「AIfES(Artificial Intelligence for Embedded Systems)」は、ソースコードを最小限にすることで埋め込みシステムでも人間の脳のようにアルゴリズムを使ってディープラーニングすることができます。

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Machine learning for sensors

Fraunhofer IPMS

超音波を利用しジェスチャーを認識する

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スマートホンのような操作はタッチスクリーンを要するため、手で接触できない状況では使えません。音声による操作は、公共のスペースなど、雑音がある環境には向いていません。
そのような環境下においても超音波を利用すれば、接触を必要とせず距離の変化を3次元で認識することができます。
300キロヘルツまでの超音波を送受信できるマイクロチップを搭載したフラウンホーファーIPMSのnano-e-drive (NED) 方式では、超音波が物体に反射して聞こえるまでの時間を計測したり、ドップラー効果を利用したりして、得られた情報が分析され、50㎝以内にいる操作者のジェスチャーなど自然な動きをミリ単位で認識することができます。迷光に過敏に反応することなく透明な物体も正確に感知する超音波振動子は、光学センサーに比べ安価で小型、大量生産にも向いています。 
自動化やセキュリティの分野、医療技術、自動車工業、あるいはエンターテイメントや家庭での利用まで、幅広い分野での応用が期待されます。

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Gesture Recognition Using Ultrasound

Fraunhofer IWS

人工知能と機械学習を使った超合金の付加製造技術

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フラウンホーファーIWSは、従来の方法では溶接・加工が困難であったニッケル合金などの超合金を使い、金属部品の付加製造を従来比10分の1のスピードで行う革新的な技術を開発しました。レーザ粉体肉盛技術によるこの方法では、強度が高い耐熱合金を使った燃費の良い航空エンジンの製造が可能になります。耐熱性が必要とされる航空エンジン向けに、粉体の供給を調節することによって高熱に晒される部分にのみ耐熱性のある高価な金属を使い、コストを削減します。その際、「futureAM」プロジェクトで集めた大量のデータを人工知能に与え、温度、粉体供給量・供給速度などの要素を導きだすよう機械学習を行っています。
金属、セラミック、プラスチックの複雑なCADモデルを基に正確に加工する付加製造技術は、大量生産と手工業の長所を併せ持ち、カスタマイズ製品も生産するインダストリー4.0の鍵となる技術です。

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Additive machines discover superalloys

Fraunhofer ICT

EPS断熱建材のリサイクルを可能にする新しい接着剤

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外断熱外壁仕上げ方式(EIFS)は、建物の通気性を良くし、エネルギー効率を高めます。建物の新規建築と既存建築のエネルギー効率を高める修築とを合わせると、ドイツで過去50年に外断熱外壁仕上げ方式で施工された建物は約9億㎡に達します。その際に使用される断熱材の約80%をビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)が占めており、年間の使用量は4万トン以上に及びます。
大量に生産される以上、処理の問題を避けることはできません。フラウンホーファーICTは、数種類のポリオールとポリイソシアヌレートをベースに二液型ポリウレタン剤とマイクロ波活性吸収体を組み合わせ、マイクロ波を使って壁面を損傷せずに剥がすことができる接着剤を開発しました。この接着剤を使えば、EPS断熱建材のリサイクルが可能になります。

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Neuer, lösbarer Klebstoff ermöglicht die Wiederverwertung von Wärmedämmverbundsystemen

Fraunhofer ILT

レーザーによる成形プロセスで生産性を3倍に

© Photo Fraunhofer ILT / Volker Lannert.

車の内装に使うプラスチックパネルは様々な方法で成形されています。その成形・加工に使われるツールの製造は、しばしば加工自体以上に大幅な時間を必要とします。
Volkswagen AGなどの5企業とフラウンホーファーILT などの3研究機関による共同プロジェクト「eVerest」では、μm単位の精密さで器具や部品の機能構造を簡単に作製するため、精密なレーザー加工を可能にするフレクシブルな機械技術を開発しています。
ピエゾ素子型可変形状ミラーによる高速スキャンや、標準ナノ秒レーザーと同じアブレーション速度で動作する超短パルスなど、参加パートナーそれぞれが専門性を生かし最適化したプロセスは、DMG Mori AGのLasertec 125をベースにした機械に組み込まれています。簡単な操作で加工できるこのレーザープロセスは、ファイバーカプラを用いたOCTシステムによって品質を管理されており、高速化と品質の向上を同時に実現します。

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Laser structuring at triple the productivity

Fraunhofer ILT

レーダーセンサー内蔵の機能性薄膜

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フラウンホーファーILT、フラウンホーファーFEP、及びアーヘン工科大学による2年近くの共同研究により、レーダーセンサー内蔵の機能性薄膜の試作品が完成しました。この機能性薄膜を使えば、自動運転車のヘッドランプにレーダーセンサーを組み込むことが可能になります。ヘッドランプ部分は、センサーにとって前後左右を把握するために最良の位置であることに加え、ランプの熱が冬季の凍結や雪を除去してくれるという面でも適しています。
カバー内側に搭載される導電性薄膜は、ヘッドライトの照射を遮ることなくレーダービームを形成します。そのため、照射方向を変えることや、近くから遠くまでの焦点合わせが容易になります。

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RadarGlass: Functional thin-film structures for integrated radar sensors

Fraunhofer ILT

ロボットとレーザーによる電気レーシングカー向け電池セルの接合

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電気自動車用のバッテリー製造プロセス向けに、ロボット支援により接合効率と品質を最適化する電池セルのレーザー微細接合技術が開発されました。
接合プロセスをモニタリングする産業用ロボットに搭載されたセンサーは、スペーサーが表面に触れ接合プロセスを開始するのを感知するとレンズを接合部分から一定の距離に保ち、プロセスに必要な焦点距離を確保します。
また、特殊な形状のコネクタを造形するため、ロボット支援のレーザー微細接合に加えてレーザー粉末床溶融結合を用いた金属3D プリンティング技術も活用しています。 これらの技術を組み合わせることで、短時間で効率よく確実に、様々なタイプの電池とパワーエレクトロニクスをレーザーベースのTAB (Tape-Automated Bonding) により微細接合します。

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E-Mobility: Battery cells optimally welded with robots and lasers for electric racing cars

Fraunhofer ILT

「都市鉱山」からの効率的な希少資源のリサイクルを実現

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フラウンホーファーILTは、EUプロジェクト「ADIR-次世代の都市鉱山-電子機器からの希少資源の自動解体、分離、回収」において電子機器からの希少資源のリサイクルに取り組んできました。
携帯電話やプリント基板にはタンタル等のレアメタルが豊富に含まれています。従来は、回収した電子機器を裁断し高温冶金処理を行っていましたが、ADIRで開発されたリサイクルプロセスでは、分解対象の電子機器が測定・分析され、材料を回収するためにピンポイントで分解を行います。
レーザー技術、ロボット、ビジョンシステム、情報技術を駆使して電子機器を自動的に個々の部品に解体することで、高純度に分別・分離された材料回収が可能になりました。中でもレーザープロセスは、電子部品の構成物質を特定し、材料を非接触で分離回収するなど、重要な役割を担っています。

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Laser Goes Green: Efficiently Recycling Valuable Materials from Electronic Devices

Fraunhofer IWS

未来のバッテリーの鍵となるリチウム金属負極

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フラウンホーファーIWSは、溶融リチウムを使って薄いリチウム金属負極を安価に生成する革新的なプロセスを開発しました。数年にわたり、数マイクロメートルの厚みのリチウム膜を作るための開発を行ってきたIWSは、数マイクロメートルのニッケル薄膜とリチウム膜を保護層によって安定させることで、金属基板に溶融リチウムの薄いコーティングを施すことに成功しました。
現在最高性能のリチウムイオンバッテリー電池は1㎏当たり250ワット時の容量を持ちますが、リチウム金属負極を使ったリチウム硫黄電池のワット時定格量は400ワット時にのぼります。固体バッテリーであるため、体積エネルギー密度も現状のリチウムイオンバッテリーと比較して70%ほど高まります。

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Key component for batteries of the future

Fraunhofer ILT

プリンテッド・エレクトロニクスの多様性を支えるレーザー技術

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電子部品を機器内部に搭載する需要の高まる中、急速に発展するプリンテッド・エレクトロニクス。電子機能を印刷された層は、レーザーによる乾燥で溶剤が除去され、残った銀や金などの機能性粒子を溶融させて接続することで導電性を持ちます。例えばひずみゲージも、抵抗線とリード線が印刷された金属部材に必要最小限のレーザー照射を行うため、従来の焼成に比べ少ない電力で速く仕上げることができます。
また、フラウンホーファーの6研究所によるモデルプロジェクト「Go Beyond 4.0」では、プリンテッド・エレクトロニクスの様々な実用化に向けたさまざまな開発が進んでいます。プリンティングとレーザーの技術を用いて繊維複合材に機能層を組み込めば重量軽減が可能なため、特に自動車や航空の分野での応用が期待されます。

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Laser technology supports the path to printed electronic diversity

Fraunhofer ILT

1秒間に直径1 µmの穴を12000個開ける超高速のレーザープロセス

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ILT-Shooting am 13.12.18 Foto: © Volker Lannert Originalfilename: 850_6495_272-2

反復度の高いレーザーシステムはスキャンスピード1000/秒を必要とし、高パルスエネルギーのレーザーシステムはエネルギーを分割するためのビームの整形・分離を必要とします。フラウンホーファーILTは、回折工学素子(DOE) を使って200以上の小ビームに分割する方法を使い、1 μm以下の領域で精密な加工を施す超高速のレーザープロセスを開発しました。高い反復度、高いパルスエネルギーで穴同士の間隔が数μm以下の加工を行うには、熱の管理も必要です。このレーザープロセスでは、加工対象の素材と加工形状ごとの最大値をレーザー出力が上回らないように削孔およびマルチビームの工程が最適化され、直径1 μm以下の穴を1秒間に12000個以上削孔することが可能になりました。

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12,000 holes per second with 1 µm diameter

Fraunhofer IFAM

アナログとデジタル -繊維強化プラスチックの自動生産

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デジタル化は、幅広い分野で生産の効率化をもたらしています。生産プロセスの様々な段階や製品だけではなく、生産プラント全体、さらには主要な制御論理においてもシミュレーションを使うことで生産性を上げ、試運転時間やコストを削減することができます。
フラウンホーファーIFAMの「Autoglare」プロジェクトでは、ロボットの動きはオフライン状態でプログラミングされ、工場の制御システムの信号にリンクしており、作成したプログラムは直接ロボットに反映されます。そのため、事前にプロセスエラーを感知、ロボットの設定時間を削減することができます。
また、フラウンホーファーIFAMは三菱ガス化学株式会社と協力してロボット制御による大型CFRP構造の加工を行い、三菱ガス化学の固体潤滑剤の孔あけや切削における効果を分析・評価しました。三菱ガス化学の固体潤滑剤は工具寿命を延ばすだけでなく部品の品質も大きく向上します。このような耐久性と品質の向上は、さまざまな産業における加工プロセスと材料構成の幅を広げるものです。

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Analog and digital – Automated manufacture and machining of fiber reinforced plastics

Fraunhofer IPT

軽量性と強度を併せ持つ金属と繊維強化プラスチックのハイブリッド素材

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近年、特に交通・運輸の分野において、省エネ・省資源の必要性から軽量化の需要が高まっています。鋼板をベースに繊維強化プラスチックで部分的に機能化することで、重量を軽減しパフォーマンス性を高めることができます。
ハイブリッド素材の新しい製造工程はレーザーによる表面加工とUDテープ装着の組み合わせが特徴です。熱可塑性繊維強化プラスチックによる補強は、レーザーによる表面加工により生じた空隙にレーザーの熱によって溶解部分が流れ込むことで強固に装着されます。
このふたつのレーザープロセスを組み合わせた方法は、硬化プロセスなどの事後処理の必要がないため大量生産に適しています。局部への精密な加熱は、ひずみや残留応力といった影響を軽減し、重量を大きく変えることなくその機械的特性を変えることができます。

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Light and strong: Hybrid lightweight components made of steel and fiber-reinforced plastics

Fraunhofer IWS

摩擦を低減してエンジンの効率を高める

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フラウンホーファーIWSは表面加工を通じて摩擦の少ないエンジン部品を開発しています。ピストンやシリンダーの摩擦を軽減する表面技術の向上は、CO2排出量を抑制することに繋がります。
レーザーアーク工程により造成されるダイアモンドのように固いカーボンのコーティングに、サメの肌に倣った微細構造を表面に施し、表面と潤滑剤の理想的なバランスを研究している自動車産業との共同プロジェクト「Prometheus」では、3年間のプロジェクトを経て開発された低摩擦エンジン部品がプロジェクト終了時に試作されます。
このプロジェクトを通じて得た成果は転がり軸受だけでなく滑り軸受にも応用され、自動車等の輸送機器だけでなく建設機械やガスエンジンにおいても低燃費を実現するでしょう。

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Economical engines due to less friction

Fraunhofer ILT

様々な特長を併せ持つ複合材のためのレーザープロセス

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異種材を組み合わせることで高い機能を発揮するハイブリッド材料は、展性・硬さ・熱伝導などにおいて各素材の異なる特性を備えており、加工時にはその様々な特性に対応しなければなりません。従来の工程に組み込み可能なフラウンホーファーILTのレーザー加工技術は、接合、切断、アブレーション、穿孔などのコストを下げ、効率と質を高めます。
レーザープロセスによるマグネシウムへの微細加工は熱可塑性ポリマーとの強固な結合を可能にします。超短パルスレーザによる精密な穿孔は強度の高いリベット結合を実現します。注入工程では母材が炭素繊維とインサートの接着剤として働くため、接着剤の塗布とその老朽化への懸念が不要になります。また、レーザー出力、走査速度、冷却時間のパラメータを最適化することで、高精度かつ高速な複合材の切断が可能になりました。

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Laser Processes for Multi-Functional Composites

Fraunhofer ILT

二つのプロセスを一つの機械に組み込みポリマーの微細構造体を速く正確に製造

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フラウンホーファーILTは、ステレオリソグラフィ (SLA)またはデジタル光処理(DLP)と多光子光重合(MPP)を組み合わせることで、高精度かつ低コストでポリマー構造体を製造できる機械を開発しています。
波長365 nmの高性能LEDとリソグラフィ-用HD解像度 のDLPチップを持つこの機械を使えば、サブマイクロメーターレベルの解像度でポリマー構造体を作製することができます。
ステレオリソグラフィと多光子光重合を兼ね備えたこの機械は、1つのプロセスにおいて必要に応じ露光装置を選択することで、それぞれの長所であるスピードと精密さの両立を可能にしました。細胞足場材やマイクロ流体システムなど、生物医学ほか様々な分野での利用が期待されます。

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Producing polymer structures faster – two processes in one machine

Fraunhofer ICT

直接冷却電気モーターとポリマー製ハウジング ―電気自動車の軽量化に貢献―

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電気自動車軽量化の鍵となるモーターの重量を軽減するため、フラウンホーファーICTとカールスルーエ工科大学は、独自の冷却システムと繊維強化ポリマー素材のモーターハウジングを開発しました。
この冷却方式では、ステータのコイルを断面の丸いものから長方形のものに替えることでステータへの密着性および占積率を高め、節約された空間に冷却水循環パイプを設置しています。循環冷却水はロータとステータを直接冷却し、熱はモーターの外へ誘導されることなく発生場所付近で放散されます。この冷却方式であればモーターハウジングに、アルミ素材に比べ成型が容易で大量生産に適したポリマーを使用することができます。
モーターの効率とエネルギー密度を顕著に改善する直接冷却モーターとポリマー製ハウジングは、実用化に向けて更なる改良を重ねています。

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Directly-cooled electric motor made from polymer materials

Fraunhofer ILT

超高速レーザーをさらに速く

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ピコ秒からフェムト秒の超短光パルス(USP)のレーザーは超高速レーザーと呼ばれ、アブレーションや切断において精密な加工を施します。近年、機能・性能を高めている超高速レーザーですが、高出力レーザーおよび高効率プロセスの面ではまだまだ改良の余地があります。
フラウンホーファーが欧州委員会の助成を受けて開発しているレーザー光源1kW のプロトタイプでは、レーザー光は60パターンのビームレットに変換され、それぞれのビームレットは個別にオン/オフにすることができます。
今後、産業化に向けて数々の試験が行われますが、最終的には現在使われている標準的な超高速レーザーの100倍ほどのスピードを持つことになります。
加工スピードのさらなる向上により、製造の個数を増やすことはもちろん、大きな表面の加工や機能化にとっても可能性が広がることが期待されます。

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Making ultrafast lasers faster

Fraunhofer IWS

金属とプラスチックを数秒で接合させる接合ガン

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フラウンホーファーIWSは、金属と熱可塑性材料を数秒で接合する接合ガンを開発しました。あらゆる生産工程への導入が可能なモジュール設計の接合ガンは、例えばロボットのアームにも装着が可能です。
接着剤による接合やリベット接合など従来の方法では、接着剤の硬化に時間が掛かったり、リベットによりプラスチックがダメージを受けたりといった難点を抱えており、追加材料のコストも発生していました。
金属とプラスチックの接合を最適化するためため、接着面にはレーザー加工による前処理が施されます。プレスされた状態で誘導加熱された接合部で熱可塑性プラスチックは金属表面に入り込み、接合はさらに強固なものとなります。

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Joining gun bonds metal and plastic within seconds

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超潤滑現象の原子メカニズムを解明

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ベアリングの極端な低摩擦はどのようにして起こるのか。超潤滑として知られるこの現象は、これまで原子レベルで解明されていませんでした。フラウンホーファーIWM(材料メカニズム研究所)とフラウンホーファーIWS(材料・ビーム技術研究所)の共同研究によって、特定のダイヤモンドライクカーボン(DLC)層と有機系潤滑剤の組み合わせにおける超潤滑の普遍的メカニズムが解明されました。この知見をもとにすれば、超潤滑層と潤滑剤の組み合わせを設計する法則を導き出すことができます。この研究結果に関する記事はNature Communicationsの10号に掲載されています。

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Elucidating the Atomic Mechanism of Superlubricity